地面にひっかき傷

8月9日。佐久の実家の庭で、畑でできた夕顔からかんぴょうを作って干していました。青空に白さがすがすがしい。
8月9日。佐久の実家の庭で、畑でできた夕顔からかんぴょうを作って干していました。青空に白さがすがすがしい。

8月13日の夕刻に車で佐久の集落を走ったら、あちこちの家の道路ぎわに人がぽつぽつ出ていて、足元から炎と煙が上がっていた。お盆の迎え火だ。

佐久や御代田のスーパーでは、お盆が近づくと迎え火用の麦わらをビニール詰の小さな束にして売っている。ほんの少し離れた上田方面ではそれが麦わらでなく「かんば」という木の皮に変わるそうで、そちらの地域のスーパーでは、くるっと丸まった木の皮をビニール詰にして当たり前のように売っているのを今年初めて実際に目にした。少し離れるただけで違ってくるものだなあと面白い。

さらに峠を越えた群馬で、お盆の真っ最中に打ち合わせにお邪魔したお宅では、昔ながらのものだという「盆棚」を見せていただいた。一間の押入れくらいある2層仕立ての木製フレームの棚を組み、花や草木で飾り、上段にはその家のご先祖さまを祀り、下段には無縁仏のためのお供えとお線香。お参りに来た人は両方にお線香をあげる決まりらしく、これまた初めて見るので興味深かった。下段の仕組みに地域社会の優しさを感じます。

7月19日。長い梅雨の終わりの時期の朝。こんな雨上がりは梅雨も悪くない。
7月19日。長い梅雨の終わりの時期の朝。こんな雨上がりは梅雨も悪くない。

長くて時には暖房を復活させるほど寒い梅雨が続くなか、スケジュールをずらして進めたつもりだった2つの現場が、諸事情によりほぼ同時の着工となった。さらに事情で休止していた別の現場が再開されてそちらの上棟も重なった。あちらの現場こちらの現場と進捗状況を確認しながら見て歩き、工務店さんのスケジュールに合わせて各種チェックや検討をしていく。それでも抜けていることがあって心底どっきりしたり、時間に追われるばたばたした日々が続いている。

現場その1が休眠から目覚めてめでたく上棟。梅雨の最中でしたが上棟日はなんとか雨にならずにもちました。
現場その1が休眠から目覚めてめでたく上棟。梅雨の最中でしたが上棟日はなんとか雨にならずにもちました。

基礎を作るための掘削が始まると、びっくりするほどの量の土が積み上がる。地面に掘り下がっていく穴は、まあ建物が入るのだから寸法としては大きいのだが、この地域は背景に山並みや広い山裾の斜面が見えてしまうので、それらにくらべると、なんだかちっぽけだなあと思う。暑いなか担当業者さんが滝のように汗を流してくださり、重機でうずたかい土の山を作って、、、いるのだけれど、この広い地表面のなかではほんのひっかき傷のようなもの。

現場その2の掘り始め。黒くて均質な火山灰性の砂っぽい土壌。
現場その2の掘り始め。黒くて均質な火山灰性の砂っぽい土壌。

昔は人力で、いまは重機での違いはあるけれど、そうやって累々と地面にひっかき傷をつけて人間は地球に住んできたんだなあと現実逃避的なことを思いながら、各種締め切りの差し迫るささやかな営みに全力を注入すべく、机での作業に戻る。この地面の大きさとひっかき傷の小ささのバランスの中に何十年と暮らし続けられるような安定を得るには、かなりの思いと注力がいることだとあらためて思うのです。

現場その3の基礎工事。こちらは赤茶の、陶器が焼けそうな粘土質。と、ごろごろ石が出てきます。
現場その3の基礎工事。こちらは赤茶の、陶器が焼けそうな粘土質。と、ごろごろ石が出てきます。

などとこの夏の現場めぐりのなかで感じていたことを、各所のお盆の様子を見ながら思い出した。そうしてできた場所に、住む人たちの時間が何年も重なっていくことで、またバランスが深まっていくのだなあとか。

現場その2は1ヶ月ほどでがっちりした基礎の形ができました。
現場その2は1ヶ月ほどでがっちりした基礎の形ができました。
以前に改修したお宅で、いくつか追加工事の要望が出て、写真のクライアントさんセレクトのフックも合わせて設置。和みます。
以前に改修したお宅で、いくつか追加工事の要望が出て、写真のクライアントさんセレクトのフックも合わせて設置。和みます。