茶色一色だった地面に、3月に入ってぷつぷつと緑の草の芽が見えてきた。とはいえ3月半ばはまだまだ茶色。ここより少し標高が低く少し暖かい佐久の実家から、庭で福寿草が咲いたから分けてあげようか、と言われ、喜んでもらってきた。
柔らかそうな葉の緑も、日差しをため込んだような暖かい黄色の花も、まだまだ色味のない御代田の庭では目にしみる。
窓から見えるところに植えてほくほくし、植えた後に冷え込んだり霜が降りたりして、ここでは枯れてしまうのではないかと朝が来るたびに心配したが、朝はぺったりして花を閉じていても、昼までには日を浴びてしっかり立ち上がる。
そうこうするうちに3月も終わりが近づき、庭の草の芽もしっかりしてきた。
1年間、床は下地合板にオイルを塗ったままで使ってきたが、昨年末に一念発起、フローリングを貼って仕上げることにした。いざ貼るとなると、未開封のまま住居部分に積んである事務室の本のダンボールを減らした方が良い→それなら同じく手付かずだった事務室の書棚を仕上げねばならないなどなど、ドミノ倒し的にタスクが増えていく。まさに一念発起。そして大工さんは忙しくて手が空かず、近隣のセルフビルダーの方々に来ていただいて、荷物を動かしながらの作業を12月1月2月と断続的に進めていった。
居住スペースを作業しているときは、台所を使えない状況を心配して、実家の両親が作業中のお昼のケータリングをしてくれた。
フローリングは、カラマツの節ありの無垢材で、貼ったところからキヌカオイルという米ぬか油を塗って仕上げ。柔らかい樹種に、コーティング力のないさらっとしたオイルなので、汚れも傷もつきやすいが、とにかく足に優しく暖かい。ラフな構造用合板の床もけっこう好きだったが、ときどきささくれがあるのでスリッパが欠かせなかった。床が仕上がって以来、ほとんどスリッパを履いていない。家の中を裸足で歩けるって素晴らしいですね。ほんの15mmのフローリングが追加されただけで、室内にいるときの体感温度も上がった気がする。
想定外の問題は、床が仕上がってみると、これまでそれほど気にしていなかった天井・壁の仕上がっていない感じが際立ってきたこと。。。
もうひとつ、去年の同時期より今年の方が暖かく感じるのが「そよ風」のシステムによる効果だ。日差しで温まった屋根の空気を1階の床下に送るパッシブソーラーのシステムを入れてみたのだが、1月→2月→3月と徐々に日差しが力強く、日照時間が長くなるにつれ、1階の事務室で暖房を入れる時間が短くなっていった。吹き出しのある事務室だけでなく家全体もほんのり温まり、外に出かけて帰って来て、玄関に入った時に、外気温との差に少しびっくりする。
また、ファンの切り替えスイッチで、最上階の天井のところから吸い込んだ空気を床下に送ることもできるので、夜に2階の薪ストーブを焚いていて十分熱がたまって来たなあというときに作動させると、1階の事務室で夜に残業するときの体感温度がふわっと底上げされるだけでなく、翌朝の仕事開始時も事務室の冷えた感じがなく、立ち上がりが早い。
去年の2月3月はこれほど「そよ風」の効果を感じなかった。そのときは、まあ屋根の温度にしても天井の温度にしても20度台〜50度台の空気を送り込むささやかなものだし、外もまだ相当寒いからこんなものかな、というくらいに思っていた。秋の肌寒い季節になってからのほうが暖かさを実感した記憶がある。
感覚だけでなく、プロパンガスの今月の請求書が来てみたら、今年の2月10日〜3月10日のガス使用量が28.8㎥、昨年の同時期は39.5㎥と大きく違っている。給湯の量は年によってそれほど変わらないはずから、あとは補助暖房として使っているガス温水暖房の使用量がぐっと減ったことになる。今年の気候が暖かかったことを差し引いても大きい。3月下旬の今は、事務室では全く暖房を使ってないが、最低気温が氷点下だった日の朝いちばんでも室温は20度を切ることがなく、午後は24度近い。
ぼちぼち理由を思い巡らせてみると、昨年は1月の頭まで居住しておらず、工事中の外気入りっぱなしの冷え切った状態からのスタートだったのに対し、今年は四季を通して1年内部空間として居住したあとなので、じわじわと建物の躯体が熱を溜め込んだ状態からの立ち上がりになっているから、そよ風の効果がこれほど明確に感じられるのではないかと思う。実際、床下の温度などもかなり安定しているらしく、床下は涼しくていいだろうと冬にジャガイモを貯蔵してみたら、快適すぎて芽がにょろにょろ出て逆に困った。
依然来た人が面白がるほど仕上げ未完の建物だが、こうして兎にも角にもいったん地球上に出現したことで、自然の四季の日差しを受けたり、ときに住人が一念発起をして手を加えたりして、少しずつ時間を経て育っていくものなんだな、とぼんやり思いながらの3月末。もちろん四季の風雨や住人の使用による経年変化(劣化)もすでにスタートしているわけですが、それは裏表の事象かと。その時々の状態を良く見て、大事に育てていきたいものだ。